「目利きになれ」が家訓。 雲州松平家や表千家の茶道具を扱い、茶文化を支え続けてきた「玉鳳堂」

渋谷・代官山茶道茶道具

南青山骨董通りで、茶道具を取り扱う「玉鳳堂(ぎょくほうどう)」。名品を明治28年から取り扱いつづけ、雲州松平家や表千家といった名家の信頼を引き受けつづけている老舗です。玉鳳堂の扱う貴重なお道具を実際に目の前で見せていただきながら、茶の世界で大事にされている精神やイノベーションの歴史について、四代目当主、山田高久さんに伺いました。

玉鳳堂四代目当主、山田高久さんにお越しいただいています。早速なのですが、お店の紹介をお願いできますか。

明治28年、私の曽祖父が名古屋から出てきて日本橋の仲通りで起業したのが玉鳳堂のはじまりです。そこで雲州松平家の当主、松平直亮伯がお越しになり、お抹茶をお出ししたところとても気に入っていただき、松平家にお出入りすることになりました。

雲州松平家の末裔の方ですね。

江戸時代からとてもいい茶道具をお持ちの松平家ですが、なかなか一般人はお目にかかれない方で、曽祖父も一生懸命アプローチしたのだと思います。しかしその後、関東大震災に遭い、家は一度全焼してしまいました。

茶道具というと、鉄瓶など以外は基本的に燃えてしまいますよね。

はい。その後、直亮伯にどうするんだとお尋ねいただき「このまま仕事をつづけさせていただきたい」とお伝えしましたら、これを元手に頑張りなさいと茶道具(備前伽藍香合)をお譲りいただいたんです。

素晴らしいですね。

ここに直亮伯の花押(※)をお描きいただいています。

※花押(かおう)……戦国時代などで用いられた、自署代わりとなる図案化された署名

伊達政宗が豊臣秀吉から「密書に伊達の花押が描かれているじゃないか」と尋問された際「いや、本物には鶺鴒(せきれい)の目に針がさしてあります」と答えたあの花押ですね。私も自分も花押を持っています。

その後は、こうしてご縁を頂き雲州松平家に出入りすることになりました。そこから少し話が飛ぶんですが、大正、昭和と高橋箒庵(たかはしそうあん)という近代における茶道具研究家・コレクターの第一人者の方と本をつくることになりました。大震災もあったので何か残しておこうと、約10冊の本をつくりました。

なるほど。

これは『走井』という茶器なんですが、松平家から譲り受けて、この本に載せさせていただきました。その際、箒庵さんよりお礼として、茶杓をいただいたんです。

また立派な箱に入っていますね。

これは箒庵さんがご自身で作られました。「昭和4年 初夏」と、自筆で記載されていますね。

実は昨年、青山の根津美術館で、大正名器鑑の展覧会にこれを出品させていただきました。そのときにうちの店の歴史や大正名器鑑についていろいろな話を聴くことができ、この背景にある物語を、美術館などの方々と勉強をする機会をいただきましたね。

素晴らしいですね。ここまで玉鳳堂の歴史をお伺いしてきましたが、山田様の自己紹介もお願いできますでしょうか。

瞬時に茶器を見抜く「目」を持つこと

大学を出て、丸栄堂という老舗画廊で修行させていただきました。祖父や父が会長をはじめ同社の方々と懇意にさせていただいていたんです。5年修行させていただく予定だったんですが、父の体調不良で4年弱で家に戻り、継ぐこととなりました。

山田家に家訓のようなものはございますか。

高校生のとき、祖父と将来の話になって、「この仕事に何が大事なの?」と聞いたんですね。すると、茶道ではまず茶碗と、抹茶を入れておく棗(なつめ)をもって入るんですが、「入ってきたとき、すぐにその茶碗がなにかわからないとダメだぞ」といわれました。

大変ですね。

そのころは「わかるかな」と疑問だったんですが、「段々と年を重ねると究極は目が利くようになるよ」と。確かに、お客様にお納めしたときに「この茶碗は〇〇だな」とわかるものっていうのは、確かなものですよね。その後、父が南青山の骨董通りで開業して50年ほど、そこを私が引き継いで30年ほどやってまいりました。

食べ物をつくる方はそのための技術を受け継がれますが、私たちのような職業では、ものを見てそれがいいか悪いか判断する目を持たなければならないと思います。この仕事は、いいものを選んで「こんなものが欲しかった」というお客様の顔を引き出すことに尽きるかなと。そうして吟味すると、基準にかなうのは100点のうち5点ほどですね。

100個品物を目にする機会があるとすると、玉鳳堂さんとしては仕入れるのは5つ、ということでしょうか。

5つあるときもあればない時もあります。逆に、希望に叶えば10個でも20個でも仕入れます。より良いものをセレクトするなかで、妥協はしたくないということですね。それが結果としてお客様に喜んでいただけることにつながります。

なかなか組み合わせも難しいですよね。家訓としても「100個のうち5個」のようなことはいわれていたりするんでしょうか。

自然とこの仕事をしているとそう考えるようになってくるのかなと思います。普通の方なら1~2分眺めて終わりのところを、角度を変えたり、どこがいいのかどこが悪いのか、細かい傷などさまざまなものを判断すると、2~3分、ときには10分かかることもありますね。

ほかに家訓となるとどのようなものがあるのでしょうか。

まとめると「目利きになれ」ということじゃないでしょうか。直接言われたわけではありませんが、結果的にはそういうことですね。

茶道具を扱うために必要なのは、「目利きの力」。たしかなそれを持っているからこそ、玉鳳堂は今日までお客様に信頼されてきたのですね。

後編へ続く

※この対談を動画で見たい方はコチラ


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