【第4回】「夏着物」を涼しくおしゃれに楽しむコツ

コラム:女将と呼ばないで!夏着物小千谷縮

こんにちは。
いよいよ夏本番、ご来店された外国のお客様より「着物って暑くないんですか?」とお声がけいただくことがあります。
このコラムを読んでくださっている皆さまも、同じお気持ちかも知れませんね。今回からは数回に分けて、着物が敬遠される大きな理由「格と季節」について分かりやすくお伝えできればと思います。

着物から帯、半衿まで「絽」や「紗」など透け感のある素材に衣替え

まずは「季節」について。
このコラムは、着物を今現在着ていない方向けの着物ABC的な、初歩の内容をしばらくは続けていきたいので、着物のことをよくお分かりの方には退屈かもしれませんがお付き合いくださいませ。
まず、夏に着物(浴衣ではなく夏着物という意味)を着る際の工夫やマナー、素材選びなどについて触れてみたいと思います。
「夏本番の着物を着る際のルール」として、6月〜9月上旬は、下に着る長襦袢の半襟の素材を「絽(ろ)」という透けた素材のものを着る(または付け替える)ことがあげられます。夏に向けては、着物自体の衣替えだけではなく、下着を含めて「季節に合いたる装い」のための準備が慌ただしくはじまります。
夏の着物や帯には、「絽」や「紗(しゃ)」といった他の季節とは異なる特別な織り方が用いられます。見た目にも透け感があり、着物と帯の比率や、そのスタイルを崩すことはできませんが、軽く、色や柄も印象を変えて夏という季節感を楽しもうという日本人の熱意・感性を感じます。
また、夏着物の素材でいうと、洋服と同じように麻を使ったものがやはりいちばん涼しいし、汗をかくことを考えると、自宅で洗えるものが嬉しいということで人気が高いです。

代表的な新潟県の小千谷(おぢや)地方の麻の着物、「小千谷縮(おぢやちぢみ)」の夏着物は、着てみると肌に密着せずに浮いているので、まるで羽のような着心地です。透けるので、下に長襦袢などを着なければいけませんが、それでも、木綿でできた浴衣を肌襦袢(下着)の上に着た時にべっとりと肌に張り付く感じを考えると、慣れると小千谷縮を着ている時の方が、実は汗をあまりかかないかもしれません。※ちなみに、着物を着る際には、肌襦袢と呼ばれる和装用の肌着と裾よけ(ペチコートのようなもの)を着て、その上に長襦袢、そして着物を着て帯を締めます。
帯の素材も、夏には透け感のある技法で織られた絹や、上布と呼ばれる特別に細い麻を使った帯など、最大限軽量化されており、夏帯の重さは、秋冬に締める袋帯(礼装用で重いものだと1㎏弱)と比べると、約3分の1の重さのものもあります。

「身八つ口」からの風通しで、洋服よりも開放感がある

また、基本的に、着物には汗をかきやすい脇の部分に、「身八つ口(みやつくち)」と呼ばれる縫い合わせられていない空きがあります(ちなみに男性用の着物には無し…あればいいのにと思いますが)。意外に思われるかも知れませんが、そこからスゥーっと風が上半身に入り込んで、案外涼しく、洋服と違って脇の汗染みなどできにくいことは私自身、新しい発見でした。当初は夏に着物を着るなんて、嫌で嫌で仕方がありませんでしたが……(笑)。
キモノは、例えるならば「ロングのワンピースドレス」。
涼しさでは、夏場のタンクトップと短パンにはもちろん負けてしまいますが、帯を締めているお腹周り以外は、上半身、下半身ともに開放感があり、ジーンズやパンツスーツよりは涼しい。

洋服と違って四季を通して形に変化のないキモノ。
夏着物、夏帯ともに言えることですが、1年を通じてたった2カ月ちょっとの期間、少しでも凉を感じさせるため、汗を逃すため脇が空いていたり、限られた素材の中で織り方を工夫したり軽量化を図るなどの日本人の涙ぐましい努力、工夫がたくさん見られます。
思いのほか、長くなってしまいましたので紋様や季節のモチーフについてのお話しはまた次回。
お読みくださりありがとうございました。
2023年6月21日 丁子屋 小林絵里

小林絵里さん

丁子屋 6代目当主

この記事を書いたのは…

虎ノ門ヒルズビジネスタワー内1階店舗に突如あらわれる寛政十年創業の老舗呉服店「丁子屋」の六代目。2016年、オリックスグループなど全くの異業種から夫の稼業である呉服屋を継ぐことに。着付け師・キモノパーソナルカラーアナリスト。常識や固定概念に囚われない「次世代へ続く着物」を伝える。2020年~芝の老舗の会「百年会」常任理事。
趣味は「誰かを着付けること・コーディネートすること」とソロキャンプ。丁子屋ホームページ丁子屋インスタグラム

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