生地からこだわりオリジナルの素材を開発。江戸時代の歌舞伎役者にも愛された浴衣の老舗「竺仙」【前編】

日本橋浴衣

創業天保13年(1842年)。180年の歴史を持つ浴衣の老舗「竺仙」。「自ら作って自ら売る」ことにこだわり、素材から開発・生産を続けています。江戸時代のファッションリーダーであった歌舞伎役者にまで広まった浴衣は、その品質の高さから現在も多くの人に愛されています。そんな「竺仙」の浴衣がどのように生み出されているのか、小川茂之さんにお話を伺いました。

浅草で創業して日本橋へ、粋なデザインが人気の浴衣

林:本日は「竺仙」の小川茂之さんにお話を伺います。よろしくお願いします。最初に自己紹介をお願いします。

小川さん:株式会社竺仙の小川茂之と申します。今年で入社して16年目ということで、先ほど6代目ということでご紹介いただきましたけど、まだ修行中の身でございます。

林:そうしましたらお店の紹介をお願いします。

小川さん:株式会社竺仙と言います。漢字が読めないという方も多いと思いますが、天竺の竺に仙人の仙と書いて「竺仙(ちくせん)」と読みます。弊社では浴衣や手ぬぐい、風呂敷などを扱っております。

創業から180年の歴史があり、浅草で創業して現在お店は日本橋にあります。初代が大変才覚があり、独特な発想と斬新なデザインで名を馳せたそうです。その品物が歌舞伎役者衆にも気に入られて、市井の皆様にも広まっていったと伝えられています。自分たちで物作りをして皆様にお届けするというスタンスは今でも変わらず、その時代に合った物作りをしております。

小川さん:明治34年に公益社から発刊された「東京名物志」にも「竺仙」の紹介が載っております。その当時すでに「渋い物の総本家本元にして、通の人は皆知っているだろう」という評価をいただいていたことがわかります。本当にありがたいことだと思って、今もこの文献に負けないような物作りを進めております。

林:創業当時は浅草だったんですね。

小川さん:はい。浅草の猿若町の辺りに創業したと聞いております。今では日本橋の小舟町に移っているのですが、実は浅草とは縁がございます。浅草の浅草寺に大きな提灯がありますが、昔から小舟町でご奉納させていただいております。今でも裏の方に「竺仙」の名前が入っていますので、浅草寺にお立ち寄りの際にはぜひ探していただければと思っております。

林:はい、ぜひ探してみたいと思います。

そしてこちらの写真は、3代目の当主が接客している様子です。この3代目は中興の祖として新たなものをいろいろと作り出しました。もちろん自分でも実際に接客をして、お客様とのコミュニケーションをとりながら物作りに反映させていました。他にも「竺仙の染めハ枠ひとがら」といった口伝がございますが、こういうものを立ち上げて、今でもちゃんと伝わっています。

他にも、竺仙鑑製というものがあります。これも3代目の時に作ったものと聞いております。

浴衣を購入させていただくと、必ずこの紙が入っていますね。

小川さん:ありがとうございます。うちの当主の目をしっかりくぐって世に出すのに恥ずかしくない商品であるという意味で、商品には必ず「竺仙鑑製」という1枚の紙をつけてお出ししております。

林:皆さん浴衣というと、どうやって出来上がるのか、知っているようで知らないですよね。今日は改めて教えていただければと思います。

「注染」の技法でつくる竺仙の浴衣ができるまで

「注染(ちゅうせん)」という技法で作った浴衣は、価格帯も含めて伝統的な染めでは一番ポピュラーなものです。まず和紙に彫った図柄を真っ白な生地に施していきます。

林:元は白い生地なんですね。

小川さん:はい。工程としてはまず糊置きといって、防染糊を木ベラを使って生地の上から置いて行きます。次に多色染めです。色を差しわけする場合には、染料が入らないように、引き糊で土手を作っておきます。

染まっちゃいけないところに糊を乗せているわけですね。どれだけ手間がかかっているかがわかりますね。

そして「こうや」ですね。これは染色の工程になります。染料が入っているジョウロのようなものを使って、職人さんが見本を見ながら、その色を注いでいきます。二反分くらいある生地が何枚も重なっているので、下までちゃんと浸透するように染料を注ぐのも職人の技術と経験ですね。

適量を入れなきゃいけないわけですね。すごく難しいですね。

そして「水洗い」です。最初に施した糊などの余分なものを落とします。

これもまた洗いすぎてもいけないわけですね。

小川さん:そうですね。染料が出てしまいますので。そして「ダラ干し」です。昔の浮世絵にも残っていますが、こうやって高いところから生地を干して天日で乾かすのが大事な工程です。

皆さんが竺仙さんの反物を目にするまでに、これだけ大変なプロセスが積み重なっているわけですね。

本当にざっくりとですが、たくさんの工程がある「注染」という技法をご紹介させていただきました。

私も竺仙さんの浴衣を持っていますが、染めが素晴らしいだけでなく、肌触りも非常に良いんですよ。この素材も含めてご紹介をお願いします。

小川さん:「コーマ地」は、当社の一番ベーシックな素材です。昔の浴衣は、「岡木綿」と言って、少し太めの木綿糸でした。それ自体は決して悪いものではないのですが、より精錬させたのが「コーマ生地」です。毛羽などを焼き切る工程を経た糸を「コーマ糸」といって、そのコーマ糸を打ち込んだ生地が、竺仙の「コーマ地」です。毛羽がなくなっているので、触り心地、着心地が断然に違いますし、何より染め上がりがすごく綺麗に仕上がります。

白い生地からスタートして何日くらいで出来上がるのでしょうか?

一反だけをずっと追いかけているわけではなく、同じ工程のものをいくつか並行して作業しています。また、無駄をなくすためにも、同じ染料を使う日にまとめて行うので、一概に何日とは言えないんです。ただ、単純に型を置いて、染料を差して、最後に洗った状態まで持ってくるということであれば、時間計算では1日くらいかもしれません。もちろんその後天日干しなどの天候に左右される工程もありますが。

作業シーズンはいつごろから始まるのでしょうか?

時期によって多い少ないはありますが、注染に関しては1年を通してやっています。夏の浴衣を作るのに、前年の夏頃から作業が始まります。

なるほど。1年も前から動いているんですね。

竺仙の歴史から、竺仙の浴衣がどれだけ多くの工程を経て出来上がるかがわかりました。後編ではさらに、素材の種類や製法などについて、お話をお聞きしていきます。

後編へ続く

※この対談を動画で見たい方はコチラ


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