包丁・はさみ・毛抜きの刃物専門店うぶけや。紙切り芸人に「切れすぎちゃって困る」とまで言わしめる究極の“研ぎ”

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日本は、百年続く老舗が3万3,000軒以上存在する世界でも稀な国。そのご当主に、老舗を老舗たらしめる“五つの奥義”を伺う連載記事。今回お話を伺った老舗は、天明3年(1783年)創業、「包丁・はさみ・毛抜き」を三本柱とする刃物専門店『うぶけや』です。

「目で見ながら、指でも感じながら、真面目にやっているだけ」

調理人から仕立て屋、紙切り芸人までもを唸らせる鋭い切れ味の秘密とは?

「うぶげでも剃れる・切れる・抜ける」客の評判がそのまま店名に

「初代の㐂之助は大変腕の立つ鍛治職人でした。㐂之助が打った刃物は、『うぶげでも剃れる・切れる・抜ける』と評判で、そのことが『うぶけや』という店名の由来になりました」

そう語るのは、うぶけや八代目矢﨑豊さんです。

二代目以降は「職商人」という形をとっていて、鍛治職人が作った刃物に店で研ぎを施して、切れ味の良い状態に整えてから販売しています。

「切れ味を自己PRすると?」の問いかけに、はにかむような笑顔で言葉を濁す矢﨑さん。野暮なことは語らないのが生粋の江戸っ子なのです。

矢﨑さんが研いだ包丁は、一流の調理人たちに愛用されています。

老舗 五つの奥義その1:刃物の切れ味は指先の感覚で決める

刃物の研ぎ場では、回転式の大きな砥石がぐるぐると回っています。こちらで「荒砥ぎ」と「中仕上げ」を施した後、「手研ぎ」で細かい調整を行います。

この日行っていた作業は、一般家庭用の包丁のメンテナンス。かなり刃が荒れて、ざらついている状態の包丁を、まずは「荒砥ぎ」していきます。「荒砥ぎ」では、細かい荒れや、刃こぼれなどを調整します。

矢﨑さんは、回転する砥石に包丁を当て、指先で刃先を押さえながらジョリジョリと音を立てて研いでいきます。鋭い刃物を指で直に押さえたり握ったりするため、神経を使います。

次の工程は「中仕上げ」。指先の感覚だけで表面の目を細かく綺麗に仕上げていきます。指先で何度も刃先を触り、刃先がまっすぐになるように整えていきます。

老舗 五つの奥義その2:最終的な切れ味の確認には髪の毛

仕上げはより丁寧に「手研ぎ」で行います。この段階では、刃先をより細かく研ぐことに集中します。

両刃は左右両手で持ち替えて、裏表を均等に研いでいくのが、うぶけやに代々伝わる手法です。片手だけで処理をする業者も多いのですが、研ぎ手を替えることによって食い込みが一段と違ってくるといいます。

最後に、切れ味の確認です。研いだ刃を自らの髪の毛に軽く当ててみせる矢﨑さん。包丁の重み自体で髪の毛に刃が完全に乗れば、きちんと刃が研げている証拠です。刃先が完璧に研げていない場合、上手く髪の毛に乗りません。この時、ギュッと押さえすぎると髪の毛が切れてしまうので、包丁の重みだけで“乗る感覚”が大切。これがうぶけやに約230年続く、切れ味の確認方法なのです。

老舗 五つの奥義その3:刃の重みだけで切れる裁ちばさみ

西洋式の裁ちばさみは、一般の方から仕立て屋まで、幅広く購入されている商品です。

力を込めてザクザクとはさみを動かせば、どんなはさみでもそれなりに切れるのは当たり前のこと。しかし、うぶけやのはさみは「刃の重みだけでスッと切れる」のが、他のはさみとは違う大きな特徴なのです。

変わり種なのが、紙切り芸人が寄席で使う「紙切り専用ばさみ」です。

「切れ味が良くてね。1ミリ幅の紙をさらに5〜6つに切ることができます。本当に切れすぎちゃって困るくらい切れるんですよね」

名人を唸らせる切れ味は、熟練の技から生まれます。目で見て、指先で触れて、2本の刃が擦り合う部分を徹底して微調整しています。

老舗 五つの奥義その4:3ミリ幅の毛抜きを絶妙な加減で研磨する技術

眉毛を整える際に最適な3ミリ幅の毛抜き。細い毛を挟んだときに滑らないように、そして切れないように、絶妙な加減で先端を研磨する必要があります。

研磨剤を毛抜きで挟み、指でコリコリとすり合わせながら真っ平にしていきます。目で見ながら、指でも感じながら、ひたすらに毛抜きを擦り合わせる矢﨑さん。さらに砥石で微調整を重ねます。

研いだ先端をライトに当てて、光が漏れてこなくなるまで研磨をします。光が漏れてこなくなったら、先端がきちっと合っているという証になります。

老舗 五つの奥義その5:毎日一所懸命、当たり前を続ける

矢﨑さんは、老舗が続いてきた理由について、「日々きちっと真面目にやっていることじゃないでしょうか」と語ります。

「それが当たり前だと思っているので、こだわっているという感覚があまりないんです。時代時代にいろんなことがあるでしょうが、毎日一所懸命、真面目に過ごしていると、いつの間にか歴史が後からついてきたという感じです。せがれにもそう言っています」(矢﨑さん)

父の背中を見て育った九代・矢﨑大貴さんも同じ職場で黙々と刃を研ぎ、「真面目に一所懸命」を継承しています。

老舗の使命とは?

矢﨑さんは老舗の使命として、「これから社会が変わっても、いつの時代もうぶけやは刃物屋であって職商人であってほしい」と語りました。

「これからも、安心してお求めいただける品物をご提供させていただきます」という矢﨑さんの言葉は、長年信頼を積み重ねてきたからこそ交わすことのできる、お客様との揺るぎない約束なのです。

 

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「五つの奥義:うぶけや編」の動画はコチラから

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