40分も煮込み、骨まで柔らかく仕上げる。200年以上の歴史を持つ、どじょう料理の名店「駒形どぜう」

浅草どぜうどぜう鍋和食

享和元年、1801年に創業した「駒形どぜう」。提供する「どぜう鍋」は江戸時代から庶民に親しまれ、200年以上の歴史が感じられる味わいです。そんなどぜう鍋はどのように作られているのか、六代目越後屋助七さんにお話を伺いました。

どじょうをおいしく食べるため、徹底的にこだわった調理法

まず、助七さんの自己紹介からよろしくお願いいたします。

私の親は、戦争もあって大変苦労して店を営んでおりました。店を継ぐ前、子どもの頃に学校へ行かしてもらえなかったのです。僕はその反動で、どうしても学校へ行けと言われて行かせてもらい、店を継ぎました。父はとても江戸文化や伝統とかにすごく執着する人だったので、「どじょう屋は昔のどじょう屋じゃなきゃだめだ」ということで、それが一番の主力でございます。どじょうだけに限って、ずっとやってまいりました。

続いて「駒形どぜう」さんのお店の紹介をよろしいでしょうか。

手前どもは享和(きょうわ)元年、1801年の創業になります。ですから今年で222年経っておりまして、私が六代目。もう今せがれが七代目候補で、一生懸命頑張ってくれているのですが、このコロナで我々もお客さんが少なくなりました。大変ですけれども、この店構えは本当に変わらずやっております。

中はこのような感じになっています。

これは「いれこみ」といって、手前にテーブルが2つありますが、昔はありませんでした。畳でなく戸で編んだ戸畳というのがあります。正面に神棚があって、その下を宮下(みやした)といいますが、「俺は宮下しか座らねえ」というお客さんも数多くいらっしゃいます。

宮下! まだ座ったことがないので、座ってみたいと思います。ここはすごく風情があるんですよ。板の上に鍋や薬味などいろいろ乗っていて。あの板は何というのですか?

金板(かないた)と言います。「どぜう汁」や「どぜうなべ」をこぼすといけないので、板の周りに、赤い銅のヘリを作っていました。大体1センチから5ミリぐらいの高さのヘリです。それで汁が出ないようにして、周りにぐるりとはってありました。明治になってから、それが緑青(ろくしょう)を吹いて食中毒の原因になるというので、金物を外して板だけになっていますが。我々は伝統的に「金板」と呼んでいます。

名残として、金板と呼んでいるのですね。

そうです。金板でどじょうを食べていただけたら、もう本当に江戸時代の、お芝居を見ていた頃の風情ある雰囲気になるんです。

そうですよね。私、実は小さい頃に祖父に連れて行ってもらったことがあるのですが、もうこの景色を強烈に覚えています。お店の雰囲気が、まるでドラマとかに出てくるような、時代劇に出てくるような場所が本当にあるんだと、子ども心にすごく感動したのを覚えております。ツウの楽しみ方として「宮下」もありますので、ぜひ、皆さん足を運んでいただければと思います。

と、いうわけでお店のご紹介をいただきました。それでは、「どぜうなべ」の作り方のご紹介もお願いします。

どじょうに清酒を飲ませてから柔らかくなるまで40分間煮る

どじょうは樽で生かしています。この樽の水をよく切って、小さい桶に入れ替えます。どじょうは、今は天然ではないんです。養殖です。だから、昔は「泥くさい」とか、そういうふうに言われていました。でも今、うちで使うどじょうは、一度も泥を触ったことのないどじょうなので、本当は、臭みはないはずですが、昔と同じやり方をしています。今のどじょうは、温泉水で養殖しています。

ここでやっているのはお酒ですね。清酒です。「清酒を飲ませる」といって、するとどじょうというのは腸呼吸をするので、水なら何でも飲んじゃいます。だから酒も水もわからず飲んでいるのですが、これは、これから調理する前の安楽死のお酒なんですね。これをたっぷり飲ませて、暴れているのが静かになった頃に、次の過程の、味噌を沸かした鍋に、さっきのぐったりした、酔っ払ったどじょうを入れるわけです。

もし、熱々の鍋にいきなり入れると暴れちゃいますからね。

そうです。暴れますから。それは気の毒だし安楽死させます。うちのどじょうは幸せです。温泉に入ってうちへ来て、お酒を飲ませてもらって、こうして料理になっている。不幸じゃないですよ。

そうですね。

これをぐつぐつと骨が柔らかくなるまで煮ます。昔だったら、どじょうはどこから来たかによって煮る分数を変えていたのですが、今はもう養殖のどじょうですから大体40分間ぐらい、よく煮ます。煮えたところで、今度はお湯の中にあけて、それを今度は蒸すわけです。それで柔らかいどじょうができるわけです。

味噌でずっと煮込むとちょっと硬くなったりすることもあるので、またもう一度お湯の方に移して、蒸し上げていくことで柔らかくなるんですね。

なるほど。蒸し上げるんですね。そしてあとは下味をつけ、鍋に並べて、皆さんが煮て、ネギを入れながら召し上がっていただく。お湯に移すところで半分ぐらいの工程が終わりですね。

仕上がりのイメージ写真がありますのでご覧いただきます。

これが「どぜうなべ」です。お湯で蒸したあとに、今度は出汁でもう1回煮ます。それを鍋に並べまして、お客様のところへ持っていくわけです。お客様は好きなだけ上に薬味を乗せて召し上がっていただくわけですが、うちは伝統的に、どんなにネギが高くても、おかわりしてもお金を取りません。もう江戸っ子の負け惜しみみたいにね。

江戸っ子の心意気からの、負け惜しみということですか(笑)。

そうですね。そして写真の左側にある瀬戸物は、割り下といいます。どじょうを煮た汁をちょっと薄くしたものを火鉢で煮ます。うちの「どぜうなべ」のふちはすごく薄いので、出汁があまり入らないようになっています。なぜかというと、このコンロの火で早く煮えるようにしたのです。

なるほど。

その代わり、割り下を自分で差しながら召し上がっていただく。やはり作る方もそうですが、召し上がる方も初心者だと、なかなか食べられないですね。ですからぜひベテランの方と一緒にお越しください。山椒と唐辛子を小皿にちょっと取って、唐辛子が好きな人は「七色」と呼んでいる唐辛子を入れて、山椒の好きな方は山椒を。そしてネギとどじょうとを一緒に食べていただくと、最高です。

今風に言うと味変しながら、山椒とか七味とか加えながら。ネギを割り下と一緒にして、それをつまみにしながらという人もいるという感じですね。やっぱり1回、美味しい食べ方をしてもらうといいですね。

そうですね。分からない方にはうちのお姉さんたちが教えることもあるんですけど、大体皆さん、初めてなのに知ったかぶりして。こちらは「そんな食い方しちゃったら美味しくないだろう」と思うんですけどね。でも何回かやれば「こうやって食べりゃいいんだな」とお分かりいただけます。ご飯を食べる方にも、ネギとどじょうとをお茶碗によそって食べていただく。これはお酒飲みだけじゃなくても、すごく精力がつきますね。

江戸時代から伝わる「どぜうなべ」は、どじょうのおいしさを最大限に活かすため、その調理法に徹底的にこだわっていました。それはつまり、「味」を絶対に変えないということ。だからこそ「駒形どぜう」は200年以上も支持されているのです。

後編へ続く

※この対談を動画で見たい方はコチラ


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